海外道中記
出張には"うだうだ"も必要です
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私は30歳の時に色々と思うところがあって、外資系コンピューター企業のSEから今の介護業界に転職しました。それから一年後の95年にアクションパッドを主力商品とする当社を設立し現在に至っているのですが、もちろんのことながら設立当時はがむしゃらでした。海外出張も大事ですが、その数日間日本の現場を離れることも時間が惜しく、片道20数時間かけてドイツまで行き現地2泊でUターン帰国が当たり前でした。良く言えば全く無駄がない、悪く言えば余裕が無いという状態です。
 これは国内の出張でも同じで、私以下すべての営業スタッフが早朝から深夜まで分刻みでスケジュールを入れ、ハードな業務をこなすということに自己満足し陶酔していました。


nb-ph-104.jpgところが、設立から2、3年して業績が安定してきた時に、ある人がぽろっと言った一言でふっと気付いたのです。人間としての面白味に欠けているということに・・・。ぽろっとの内容は、『今日も仕事の話だけで終わっちゃいましたね』でした。
 最後のお客さんとの商談が終わっても、次の日の早朝に別のお客さんと会えるように夜中のうちにレンタカーで県を移動するようにしていましたし、昼食はドライブスルーで買って食べながら移動することを前提にスケジュールを組んでいましたので、意気投合して夕食や昼食に誘っていただいてもお断りするしかなかったのです。まるでエリート商社マンにでもなったつもりでした。
 今から思えば、人間関係を無視した当時の営業活動が如何にうわべだけのお付き合いを助長させていたか、恥ずかしい限りです。


nb-ph-105.jpgぽろっと言われたその時から、気付くのが遅かったものの余裕をもつということは人間関係だけではなく、面白味のある人間になるためにも必要だと確信しています。ドイツに行ってもイギリスに行ってもアメリカに行っても、つまりはどこの国に行ってもホテルと展示会場しか見たことがなかった以前の海外出張。これでは土産話もしようがありませんし、その国の文化や国民性、流行を知ることもできません。それ以降の海外出張では、贅沢と言われるかもしれませんが、本来の仕事の時間に半日から1日ぐらいの自由時間を用意して、目を肥やし平べったい自分を少しでも彫りの深い人間にすべく、町中や名所を周るように心掛けています。  余談です(もっとも、この道中記の大半が余談です)が、この章の題名は『出張には"うだうだ"も必要です!』としましたが、"うだうだ"は私の辞書では"有駄有駄"です
 『駄』という字は、本来は粗悪なものを表すあまり良い意味の漢字ではありませんが、駄菓子や駄賃、下駄、駄洒落などに使われるようにどこか憎めない意味ももっているので私は好きです。出張に"無駄無駄"は必要ありませんが、"有駄有駄"は大いに必要と考える私は変わり者でしょうか?