海外道中記
恐るべし!美濃先生!
ph-p-11.jpg
10月25日木曜日。二日間みっちりと展示会を見学し、米国アクションプロダクツのスタッフとの製品開発、販売戦略の打ち合わせも滞りなく終えました。雨宮さんは8時頃の便で日本へ向けて出発しました。
通常の展示会なら私もせいぜい現地3、4泊で帰国しますが、今回は違います。西アメリカの医療・福祉機器展と関係企業の情報を収集するためにラスベガスへ行きます。アフターファイブを結構楽しみにしてますが、その話は後ほど書きます。

 今回のメドトレードでは初めて美濃先生とご一緒したわけですが、医師として褥瘡予防の第一人者としての美濃先生は普段のお付き合いで存じてましたが、実はその他にも経営者、開発者、或いはユーザーとしてなど様々な視点から物事を見ておられ、とてもたくさんのことを学びました。

 例えば車椅子用スロープの主流は板状のものですが、メドトレードでは30cmくらいの板をつなぎ合わせたものが普段はロール状になっており、使う時にはそれを伸ばすと2mくらいの板になる、という商品がありました。この商品は、普段の収納スペースがとても小さく、持ち運びにも便利という長所があります。私がメドトレードで興味をもった十数点のうちの一つですが、自分では結構気に入ってました。
 
 美濃先生にアドバイスをいただこうと思い空いている時間に一緒にそのブースまで行っていただいたのですが、商品を一目見るなり一言。『複数の車椅子の人が使う時は、車椅子のサイズによっていちいちレールの間隔を変えないといかんな。』それに続いて『雨の日には車椅子の車輪が滑るなぁ』『旅行に持って行くのは良いけど、そもそも階段のところすらバリアフリー化してないところは、トイレとか他で不便があるやろなぁ』『介護する男の人が二人もいたら、このスロープ敷くより手で抱えた方が早いやろなぁ』と波状攻撃。とどめの一撃は『日本でこの商品をこの価格(結構高いんです)で買う人はどれくらいいるかな?』『台湾や中国で作ったら三分の一くらいの原価でできるなぁ』

 『先生、最初のいくつかはともかく、最後の市場分析や原価の話はディーラーや貿易商社としての私の領域ですよ!』と言いそうになるのをぐっと呑み込んで敗北を認めました。何に敗北を認めたかと言いますと、複数の人が使うには不向きということは全く気付かなかったということと、商品のアドバイスだけでなく企業家的な着眼で観ておられたということにです。

 偉そうなことを言うようですが、私たちもプロです。そのプロが陥りやすい落とし穴は、良いアイデアを思いついたり良い商品を見つけた時に、周りが見えなくなってしまうことです。『すばらしい!絶対ヒットする!』という思いが先にたってしまい、客観的判断ができなくなってしまいがちなのです。私はそのために、感動が薄れた頃(2、3日後)つまり頭が冷めた頃にもう一度冷静に見つめ直すようにしていますが、初めて見た商品でそれらすべてを一瞬で分析してしまうというのは恐れ入りました。

 もうひとつエピソードをご紹介します。これは後にご紹介するラスベガスでのことですが、宿泊したホテルはミラージュホテルといい、ラスベガスの中でもベラッジオホテルと並んで人気のホテルです。そのホテルのカジノを横切っていた時に、私は床のカーペットがものすごく高級かつ上品(ある種の芸術性を感じました)であることに気付きました。そこで美濃先生に『先生、このカーペットすごいですね。ここまで繊細に作ろうと思ったらペルシャ絨毯なみの値段になりますよね』と話し掛けると、美濃先生はむつかしい顔で『僕もさっきから見てたんだけど、それよりも横幅で何メートルも切れ目がないねん。っていうことは、これだけ立派な織物を少なくても幅5m-6m、長さ数十m連続して織ってるってことでしょ。そっちの方が凄いよ。』
後でホテルの人に聞くと、もちろん特注の絨毯でカジノ部分だけでも数億円かかっているそうです。

 私も結構何にでも興味をもつ方で、日頃から歩いていても食べていても『なんでマンホールの蓋は丸いのかな?四角い場合の良いところは?悪いところは?』や『このレストランはどうしてこの色の、この材質の、この形の椅子を使ってるんだろう?』などと他愛もないことばかりを考え、場合によってはその答をとことん捜し求めて生きています(笑)。ほとんどは大した理由はありませんが、中には思わずうーんと唸ってしまうような工夫や思いのこもった理由のものもあります。また話がわき道へ逸れてしまいましたが、つまり言いたかったのは、住宅展示場でも絨毯展示場でもない異国の、それも豪華絢爛で熱気に包まれたカジノ場で、あろうことか床の絨毯に心を奪われて魅入っている私も変わり者ですが、その絨毯の切れ目を探していた人がいたとは、私にとって衝撃的事実でした。

 『円柱も真横から見ると四角形、真上から見るとただの円』とは多角的に物をみる喩えでよく使われますが、美濃先生の場合は『中に入って内側から見ると』や『斜めや縦に切ると』『三角柱をくっつけると』なんていう超多角的な視点があるようです。
この数日間ご一緒して美濃先生の人となりを知ることができましたが、総じて言えることは『恐るべし美濃先生』です。