始めは映画か昔の事件の記録フィルムかと思っていました。ところが、どのチャンネルに替えても同じ映像に引きつったアナウンサーの顔、顔、顔・・・。
父が貿易商をしていましたので、小さい頃からアメリカは馴染みがあり、外国の中でも特に好きな国でした。それだけにショックは大きく、結局明け方近くまでニュースにくぎ付けになっていました。
それから数日して、このテロ事件は思わぬところにも影響が出ていることを知りました。ニューオーリンズで開催される米国で最大の福祉機器展『メドトレード』の開催が中止されるかもしれないというのです。
また、メドトレード見学を予定されていた日本褥瘡学会関係の先生方や福祉業界の関係者の中に、キャンセルされる方が相次いだのです。
2次3次のテロが噂されていましたし、万が一のことがあってはとのご判断ですが、私は並外れた楽天家ですので、大して悩むこともなく予定通りにアメリカ行きを決意したのでした。
10月になる頃には、メドトレードの事務局からも予定通り開催するので是非きて欲しいとの書面が届きました。ただし、注意書きとして場内のいかなる場所でもいかなる時でも荷物チェックを行うのでそれには必ず従うようにとありました。
しかし、4月以外の普通の時でもショーハウスはもちろん、ホテルのロビーから喫茶店、レストラン、街角に至るまでありとあらゆるところでジャズの生演奏が
されており、ジャズマニアでなくても十分に楽しめます。と言うよりもジャズファンになっちゃいます。バーボン通りやロイヤル通りなどは夜は年がら年中お祭
り騒ぎですので、思いきって繰り出すことをお勧めします。池袋や新宿なみに人が多いので、路地裏に迷い込まなければそれほど危険性はありません。
ニューオーリンズは、96年にオリンピックの開催されたアトランタやディズニーワールド・ユニバーサルスタジオのあるオーランド、マイアミなどと同じ"アメリカ南部"にあります。
気候的には九州の南部くらいで、日本人にとってはハワイやロスほどメジャーではありませんが、アメリカ人にとっては一度は訪れてみたい観光地です。料理は
フランス人が伝えたケイジャン料理とフランスやスペインの血をひく人(クレオール)の家庭料理であるクレオール料理が代表的なものですが、どちらもスパイ
シーをふんだんに使った魚介類、穀物類でグルメな日本人でも十分に楽しめます。ちなみに、自称グルメ通の私もザリガニのてんこ盛りだけはギブアップしまし
たが、それ以外はすべておいしく戴きました。
観光面では1850年頃完成したアメリカ最古のアパートや1823年にアメリカで初めて薬剤師免許をとったルイス・ダフィーヨ氏が開いた薬局、日本でも有
名なラフカディオ・ハーンが来日前に住んでいた家、1811年に完成したアメリカで最初の超高層ビルなどがそのまま残っています。ただ、ハーンの家は今は
扉を抜けるとストリップ劇場ですし、超高層ビルも当時は衝撃的なニュースであったでしょうが実は単なる4階建てで今でも入居者はいます。日本人の感覚では
そのような建物はすべて文化財になって保護されそうなものですが、そこはアメリカ、国が保護していないからと言って壊す人がいるわけではなく、今でもしっ
かりと建物として機能しています。
あと、観光で見逃せないのはフランスの植民地時代の名残が残る『フレンチ・クォーター地区』やミシシッピー河を蒸気船でクルージングするツアー(4時間で30ドルくらいです)、夜になるとあちらこちらで繰り広げられるジャズの生演奏です。ショッピングは、高級ブランド店が並ぶような高級ショッピング街はないものの、地元や中南米産の土産は豊富です。まあ、飾らない土地柄と言いましょうか、そのかわり地元の人はおおよそ明るくて親切です。
荷物チェックが厳重だろうと予測してフライトの3時間前に空港に着きましたが、確かに度を過ぎるほどに入念なチェックを受けたものの、乗客自体が激減していましたので、結局は通常より早くゲートを通過しました。

ニュースで見て予想はしていましたが、乗機率は20?30%程度ととても悪く、乗客みんなが1人で4人分の座席を独占していました。肘掛けを上に上げると176cmの私が寝転がっても足は出ません。
楽ではあったけど、同時に何とも言えない淋しい感じがしました・・・。
もし今後行かれる方は、時間はたっぷりありますので多めに本を持っていかれてはいかが?
また、日本の航空会社と米国国内線は連動していませんので、乗り継ぎの悪いことが多く、デトロイト空港で4時間待ちなんてこともあります。飛行機の予約をとる時に待ち時間もチェックしてどの空港で乗り継ぎをするか決めると良いです。
脅かすようなことばかりになってしまいましたが、安心して頂ける情報をひとつ。デトロイトは自動車工業の中心地で日本人も非常にたくさんいます。ですか
ら、空港内の案内板には日本語も表示されていますし、よほど運が悪くなければ見渡すとどこかに日本人がいますので、声をかけてヘルプしてもらうといいで
しょう。
ほとんどのマイレージカードは有効期限があったり、ツアー旅行や格安チケットだとポイントも少しだけしか貯まりませんので、そうちょくちょくと
飛行機に乗る人でなければ特典を使えないままに振り出しに戻ってしまいますが、NW航空のように有効期限がなかったりツアー旅行でも格安チケットでも丸々
ポイントの貯まるカードもあります。
とにもかくにも、絶対損はしませんから取りあえず持つだけは持ってください、マイレージカード。

ところで、たいていのホテルにはロビーのどこかにコンシェルジェ(CONCIERGE)というサービス係がいます。
出張や旅行で昼間に街中を歩く分には全く心配はいりませんが、路地裏や普通の旅行者が行かないような地域には行かない方が無難です。ガイドブックを見ながらや物珍しそうにキョロキョロしながら歩くと一目で観光客とばれますので、狙われやすくなります。
道を聞く時は、大きな店やガソリンスタンド、近くのホテルなどで聞くと安心です。車で送ってくれる親切な人もいるかもしれませんが、これは丁寧にご辞退した方が良いでしょう。
また、ホテル内でもごくまれに凶悪な輩がいます。部屋に入る時は後ろに人がいないことを確認して、もしもいたらやり過ごしてから鍵を空けます。ノックさ
れて従業員らしい服装をしていても必ずチェーンをつけて空けることも大事です。伝言は電話で聞くシステムが一般的ですし、通常は従業員が部屋までくること
はありません。見に覚えのないルームサービスなどはしっかりと断ってください。
最後にアメリカは日本に比べると治安が悪いと言われますが、テレビや映画であるような銃撃戦や殺人が四六時中あるわけではありません。日本にいる よりも少しの注意をすれば大丈夫です。ちなみに私の古い友人は10数年ニューヨークに住んでいますが、ただの1回も事件に遭遇したことはないと言っていま すし、私自身10数回アメリカに行っていますが、やはりそんな経験はありません。念のため。
戦後の日本を築き上げた、かつて企業戦士・会社人間と言われた人達も、当時のアメリカ人などから見るとこのように映っていたのだろうなと思いまし
た。今の私たちの世代でこれほどの気迫をもっている人はいるだろうかと考えると、日本の栄光の時代はもはや終焉に向かっているなとがっくりしてしまいまし
た。
暗い横道に逸れてしまいご免なさい。ただ、その人達のお陰で一層のやる気と決意を固めることができたのは事実です。
私たち4人の日本人は、それぞれがそれぞれの立場で、それぞれの目的達成のために全力を尽くす覚悟を決めてメドトレード会場へ向かったのでありました!
HCRとの大きな違いは、主観ですが国の内側に向いているか外側に向いているかだと思います。
それに対してHCRは、どちらかというと日本国内に向けた情報発信、販路の構築ではないでしょうか。この違いは出展商品にも大きく出ています。海外の主だった展示会で日本企業が出展していることは非常に珍しいことです。皆無と言ってもいいかもし れません。商品を開発する時に、国内だけでの販売では販売数量は限られたものになります。ですから車椅子やベッドなどある程度の販売数量が見込めるものは 設備投資をしてでも開発をしますが、値段の安い(利益の低い)商品や少数の人たちのための商品(半身麻痺、リウマチの人用など)は、利益が見込めないので なかなか商品化できないというのが現状です。
ところが、アメリカを始め欧米各国の企業は、開発時点で国内販売だけでなく輸出も考えていますので、日本企業ができない安い商品や少数の人たちのための商品開発ができるのです。
そのため、メドトレードなど海外の展示会の出展商品の中には『こんなものまであるの?』『こんな調整もできるの?』っていうような商品がたくさんあります。
私たちのような貿易系の業者は、そんな素晴らしい海外の商品を日本の消費者の皆さんにご紹介するために存在しているのです。(宣伝みたいでごめんなさい。)
ところで、朝食はホテルのレストランでバフェスタイル(日本でバイキングと言われるあの取り放題、食べ放題システム)というのが一般的ですが、バイキン グって日本でしか通じない言葉ってご存知ですか?なんでも一昔前に帝国ホテルの中にあった『バイキング』というレストランが色々な料理を取り放題・食べ放 題という方式をとったのが最初で、そのレストランの名前がそのままバイキング料理というふうに世に広がったと聞いています。
私が20代で初めて海外出張に行き出したばかりの頃、ニューヨークのホテルで『バイキングはどこ?』と聞いて『そんなものここにはいないよ!』 と言われ『取り放題・食べ放題のやつだよ』と聞き返すと『そりゃあバフェって言うんだよ』って笑われて大恥をかいたことがあります。そうです、『海賊はど こにいるの?』って聞いたようなものなんです。学校で教えてくれなかったもんなぁ・・・。

私と社長は、一番に米国アクションプロダクツのブースへ行き情報交換と販売戦略会議。美濃先生、雨宮さんとは一旦バラバラに。
会議終了は10:30くらいでしたが、とにかく昼食時までに場内を一周はしておこうとかなり足早に場内を廻りました。HCRに行かれた方はもうお分かり
と思いますが、そう、無理でした。仮にわき目も振らずに一目散で駆け抜けたとしても、網目になった通路をジグザグに進むと何キロにもなるのです。結局、昼
食の待ち合わせまでに半分も廻れませんでした。
昼食は、会場内にいくつもレストランがありますが、混雑が予想されたので4人で隣接するショッピングモールの飲食店街へ行きました。メドトレード会場と同
じくミシシッピ川に沿って横長の建物で、飲食店街はハンバーガーから中華料理、シーフードなど色々な店、と言うよりカウンターがあり、買ってからどこでも
好きなテーブルで食べるというものです。
私は午前中の続きで、少しでも興味を引く商品が展示されているブースを丹念にチェックしながら、ようやく一通り廻りきったのが15時くらい。私自身は、年
中展示会に出展しており、朝から夕方まで1度も座ることがなくてもあまりしんどいと感じたことがありませんし、週末はテニスをみっちり4?6時間していま
すので体力には自信がありましたが、何故かこの時ばかりは疲れがどっと出ました。鞄がカタログでパンパンに膨れ上がっていたことと靴のせいです。普段は出
展者側の立場ですが、見学する側の大変さがよく分かりました。
いつも出展者アンケートには『来場者の負担が大きいので、これ以上会場を大きくするのは如何なものでしょうか?1社あたりの小間数に制限をつけるべきでは?』と書きこみますが、これからは更に声を大にして訴えていきます!(笑)
もう一方のテーブルゲームは、ポーカーやブラックジャックなどトランプゲームをディーラー相手にするわけですが、こちらは一攫千金は狙えませんが ディーラーや同じテーブルの他の客とおしゃべりを楽しむことができます。片言英語でも身振り手振りで十分です。ある意味で最も外国人と身近に接しられるの はカジノかもしれません。
一時間くらいブラックジャックをすると、足の疲れが取れたので帰ることにしました。結局わずかながら勝ち。 海外では病院で治療などすると全額個人負担となり、極端には救急車を手配するだけでもお金のかかるケースもあります。
ある旅行会社の
情報ですが、孤島のリゾートホテルでリフレッシュ休暇をとっていた旅行者が、持病の心臓発作を起こし意識不明になったそうです。しかし病院などはなく、急
遽チャーター便で一番近い都市の病院へ搬送され一命を取り止めました。問題はそこからです。往復のチャーター便や治療費、入院費、帰国するための正規運賃
等々で、なんと2,000万円の請求書がきたということです。生命保険に入っているからと安心していたその人、海外では適用されないと聞いて顔面蒼白だっ
たそうです。
冗談のような話ですが事実です。一般的な生命保険は海外での治療、入院には使えません。ツアー旅行ならたいていは海外旅行保険が付いているか、少 なくとも案内はしてくれると思いますが、そうでなければ是非、海外旅行保険に入ることをお勧めします。万が一忘れていたとしても、空港カウンターですぐに 手配できますのでご安心を。また保険の内容については死亡や治療、入院が基本ですが、わずかな金額で盗難や傷害(こちらの不注意で他人に怪我をさせたと か、窓ガラスを割ったとかを保証してくれます)などもカバーできますので、同じ入るならすべてを包括したパッケージが良いと思います。
最後にお持ちのクレジットカードによっては、海外旅行保険が自動的に付いているものもありますが、注意が必要です。旅行費用をそのクレジットカー
ドで事前に支払っていなくては使えなかったり、盗難や傷害は対象外であったりということがあります。また、保証金額が十分でなかったり、新規にカードを
もってから一ヶ月は対象外などということもありますので、十分にクレジットカード会社のサービスセンターで説明をお聞き下さい。
では、安心のできるご旅行を。
時間が早いせいかあまり客は入っていませんでしたが、4人で行って4人テーブルに案内されました。当たり前のことですが、なんともテーブルが小さ い!料理がきたらさぞかし窮屈だろうと、ウェイトレスに6人テーブルへのチェンジをお願いしましたが、もうじき混んでくるので駄目とつれない返事。再度5 ドルチップを付けて頼むと、今度はニコニコ笑って案内してくれました。(笑)
これこそアメリカなのです。自分の担当する6人用テーブルに6人が座るとチップは6人分。ところが4人しか座らないとチップは4人分しか入りません。そこ でその差額を5ドルのチップで埋めるというわけです。サービス業に従事する人たちは賃金が低くチップも重要な収入源ですから、極端に言えばチップの金額に よってサービスの変わることもあり得るのです。

明日は、整理して絞りこんだ商品や会社のブースに"英語堪能な"私どもの社長と再訪問して本格的な商談をするのです。
取引上聞くことは何か、決めなければいけないことは何か、事前に整理しておかないと、残念ながら私の英語力では十分な商談ができないという次第です。
最近は商売も難しくなってきました。3年くらい前までは帰国してから十分に検討した上でファックス商談ができましたが、最近は帰国してファックスを送ると『もう日本の輸入総代理店はできた』ということも稀にですがあります。
それはつまり、展示会場で契約を締結するケースが増えてきたということです。考えれば怖いことです。初めて会った人どうしが、お互い相手のことをろくに調
べないままに重要な取引契約を締結するというのですから・・・。そんなケースはまだまだ少ないですが、徐々に増えてきていることは確かなようです。そのこ
とが、早いスピードで良い商品が日本に普及するということにつながるのであればハッピーエンドですが、中には消費者を裏切るようなとてもずるい会社もある
ようです。
急速に成長する業界はIT産業がそうであったように、必ずどこかでしわ寄せがきます。
十分な研究をせずに商品化したり、利益重視というより利益だけを追求する企業が出てくるということです。
十分な研究をせずにうわべだけ似た商品を低価格で発売するとどうなるでしょう。例えば『床ずれのできる床ずれ予防具』を買わされる人がたくさん出てくると
いうことです。その結果、それを買わされた人は『床ずれ予防具は意味がないよ』という判断をしてしまいます。数年前までは誰も見向きもしなかった福祉・介
護業界で、細々とではありますが一生懸命研究開発に取り組んできた優良企業の商品まで同じ判断をされてしまうのです。
しかも、そのようないい加減な姿勢で参入した企業は、売れないとみると1?2年ですぐに撤退してしまいます。残されたのはそのジャンルの商品すべてに与えられた悪い評価と、満足に保証を受けられなくなった購入者の方々です。
このことは私の意見というだけでなく、様々な関係者(一般の方、病院・施設関係者、業界関係者、業界紙記者等)の間で最も憂慮すべきこととしてよく話題に上がります。
ドイツのニュールンベルグで開催された展示会へ見学に行った時のことです。ヨーロッパで非常に高い評価を受けているにも関わらず、日本では全く普及していない、そんな逸品がありました。詳しく話を聞こうとドイツ人担当者探すと、日本人の先客がいました。
その日本人の話が終わるのを待って担当者に話し掛けると、『申し訳ない。さっきの日本人は★★★会社(誰でも知っている大企業です)の人で、口約束だけ
ど日本の市場はすべて任すことになった。後日正式に契約をするけど、日本でうちの商品を売ってくれるのなら★★★を通して下さい』とのこと。
それでは、とさっきの日本人を探すと、あまり時間が経っていなかったのですぐに見つかり『私もとても良い商品だと思いました。弊社の販売ルートで紹介していきたいので、取引条件を教えて下さい』と言うと、ニコニコ笑いながら耳を疑うような一言。
『日本で販売する気は全くありませんよ。』『・・・。えっ?』聞き返すと、『うちが部品を収めているメーカーが同じような商品を開発中で、それが完成す
るまでにあんな良い商品が売り出されたら困るんですよ。3年間の総代理店契約を結んどいて一切売らないの。そうすると、その間にうちの取引先メーカーの商
品が完成するでしょ。その後にさっきのドイツメーカーには頑張ったけど売れなかったよって言って契約解除するわけ。誰でもやってるよ。』
この会話を録音しているわけでもないので、私が今さら問題提議しても国会のように言った言わないの泥試合になるだけです。
ですが、『うち以外に商品を流すんだったら、うちは一切やらないよ。うちの会社の規模を知ってるでしょ?うち1社にすべて任せなさい。悪いようにしないか
ら・・・。』こんなやり取りがあったようです。ドイツ人担当者は、その日ビッグな商談がまとまったということでとてもハッピーな気持ちでいたでしょう。あ
るいは、増産体制の検討を始めていたかも知れません。
その悪い日本人は★★★会社の海外駐在員とのことでしたが、あるいはその会社の中ではとても高い評価を受けている人かも知れません。
競合商品の日本参入を阻止したのですから・・・。ですがその結果、日本に悪い印象をもつドイツ人が少なくとも一人増えたということと、日本に欧米各国の優れた介護用品が普及するチャンスを奪ってしまったという事実は残ります。同じ日本人として改心を望みます。
1999年3月の出来事ですが、現在のところ日本の企業からそのような商品が発売されている様子はありません。
その打ち合わせと昼食時以外は、ひたすら会場内を廻っていました。昨日と合わせると何周したかわかりません。
しかし、毎度のことながら廻っても廻っても新しい発見をしてしまうのです。『あれ?こんな商品あったかな?見落としていたのでは・・・。』
と思い始めると、他にも見落としている商品があるかも、と恐怖に駆られてもう1周となってしまうのです。
雨宮さんが見つけたヒット商品にこんなエピソードがあります。物はどこにでもある歩行補助具。私もそのブースの前は何度も通ったのですが、特に気 にかけてませんでした。ところが、雨宮さんはそこに大きな違いを見つけたのです。従来の歩行補助具は自転車のようにレバーを握るとタイヤにブレーキパッド が押し付けられて止まるわけですが、それではタイヤが磨耗するとブレーキのききが悪くなるという問題点があります。ところが、雨宮さんが目を付けた商品は ドラムブレーキだったのです。車輪(プラスチックなど)の内側にブレーキパッドを押し付けるタイプなので、タイヤの磨耗に影響を受けません。その他にも 使ってみないと分からないようなところに色々な工夫がしてある優れもので、その商品開発の心意気もですが見つけた雨宮さんには感服します。ふつう25万点 の商品の中の、これまた何十種類もある歩行補助具の中から見つけます?そんな小さな違い。
その1件までは、私は例えば音声認識電動ベッドやコードレス昇降機みたいな、それ自体が珍しいというような商品ばかりを探していました。ですが、それ以来、目を皿のようにして場内をひた歩き『密かに差別化された既存商品』を"発掘"することを楽しみにしています。
話がまた逸れてしまいましたが、つまり何周廻ったとしても、1つでも見落としていた商品があったりそんな発掘をしてしまうと『他にも見落としがあるんじゃないかな』と、居ても立ってもいられなくなってしまうのです。
私が満足して展示会場を後にすることがあるとしたら、1周じっくりと廻っても、すべてチェック済みか興味のない商品であるという時ですが、残念ながらまだ一度もそんなことはありません。
悔しいのは、雨宮さんとホテルのロビーなどで見つけた商品の情報交換をするのですが、『西村さん、見ました?こんな面白い商品ありましたよ』と言われて、不覚にも記憶にない時です。しかも私にとってもおもしろいと感じる商品であった時はなおさらです。
もちろん私も応戦します。私が見つけた商品を『雨宮さん、見ました?こんな面白い商品ありましたよ』と言って、雨宮さんが『へぇー、どこにあったの?』。ここぞとばかりに『あれ?気付きませんでした?1500番くらいのとこですよ。』と反撃します。
私と雨宮さんの激しい闘いはこれからも続きます。(笑)
今回のメドトレードでは初めて美濃先生とご一緒したわけですが、医師として褥瘡予防の第一人者としての美濃先生は普段のお付き合いで存じてました が、実はその他にも経営者、開発者、或いはユーザーとしてなど様々な視点から物事を見ておられ、とてもたくさんのことを学びました。
例えば車椅子用スロープの主流は板状のものですが、メドトレードでは30cmくらいの板をつなぎ合わせたものが普段はロール状になっており、使う
時にはそれを伸ばすと2mくらいの板になる、という商品がありました。この商品は、普段の収納スペースがとても小さく、持ち運びにも便利という長所があり
ます。私がメドトレードで興味をもった十数点のうちの一つですが、自分では結構気に入ってました。
美濃先生にアドバイスを頂こうと思い空いている時間に一緒にそのブースまで行って頂いたのですが、商品を一目見るなり一言。『複数の車椅子の人が使う時
は、車椅子のサイズによっていちいちレールの間隔を変えないといかんな。』それに続いて『雨の日には車椅子の車輪が滑るなぁ』『旅行に持って行くのは良い
けど、そもそも階段のところすらバリアフリー化してないところは、トイレとか他で不便があるやろなぁ』『介護する男の人が二人もいたら、このスロープ敷く
より手で抱えた方が早いやろなぁ』と波状攻撃。とどめの一撃は『日本でこの商品をこの価格(結構高いんです)で買う人はどれくらいいるかな?』『台湾や中
国で作ったら三分の一くらいの原価でできるなぁ』
『先生、最初のいくつかはともかく、最後の市場分析や原価の話はディーラーや貿易商社としての私の領域ですよ!』と言いそうになるのをぐっと呑み 込んで敗北を認めました。何に敗北を認めたかと言いますと、複数の人が使うには不向きということは全く気付かなかったということと、商品のアドバイスだけ でなく企業家的な着眼で観ておられたということにです。
偉そうなことを言うようですが、私たちもプロです。そのプロが陥りやすい落とし穴は、良いアイデアを思いついたり良い商品を見つけた時に、周りが 見えなくなってしまうことです。『すばらしい!絶対ヒットする!』という思いが先にたってしまい、客観的判断ができなくなってしまいがちなのです。私はそ のために、感動が薄れた頃(2?3日後)つまり頭が冷めた頃にもう一度冷静に見つめ直すようにしていますが、初めて見た商品でそれらすべてを一瞬で分析し てしまうというのは恐れ入りました。
もうひとつエピソードをご紹介します。これは後にご紹介するラスベガスでのことですが、宿泊したホテルはミラージュホテルといい、ラスベガスの中
でもベラッジオホテルと並んで人気のホテルです。そのホテルのカジノを横切っていた時に、私は床のカーペットがものすごく高級かつ上品(ある種の芸術性を
感じました)であることに気付きました。そこで美濃先生に『先生、このカーペットすごいですね。ここまで繊細に作ろうと思ったらペルシャ絨毯なみの値段に
なりますよね』と話し掛けると、美濃先生はむつかしい顔で『僕もさっきから見てたんだけど、それよりも横幅で何メートルも切れ目がないねん。っていうこと
は、これだけ立派な織物を少なくても幅5?6m、長さ数十m連続して織ってるってことでしょ。そっちの方が凄いよ。』
後でホテルの人に聞くと、もちろん特注の絨毯でカジノ部分だけでも数億円かかっているそうです。
私も結構何にでも興味をもつ方で、日頃から歩いていても食べていても『なんでマンホールの蓋は丸いのかな?四角い場合の良いところは?悪いところ は?』や『このレストランはどうしてこの色の、この材質の、この形の椅子を使ってるんだろう?』などと他愛もないことばかりを考え、場合によってはその答 をとことん捜し求めて生きています(笑)。ほとんどは大した理由はありませんが、中には思わずうーんと唸ってしまうような工夫や思いのこもった理由のもの もあります。また話がわき道へ逸れてしまいましたが、つまり言いたかったのは、住宅展示場でも絨毯展示場でもない異国の、それも豪華絢爛で熱気に包まれた カジノ場で、あろうことか床の絨毯に心を奪われて魅入っている私も変わり者ですが、その絨毯の切れ目を探していた人がいたとは、私にとって衝撃的事実でし た。
『円柱も真横から見ると四角形、真上から見るとただの円』とは多角的に物をみる喩えでよく使われますが、美濃先生の場合は『中に入って内側から見ると』や『斜めや縦に切ると』『三角柱をくっつけると』なんていう超多角的な視点があるようです。
この数日間ご一緒して美濃先生の人となりを知ることができましたが、総じて言えることは『恐るべし美濃先生』です。
余談ですが、アンドリュー・ジャクソン元大統領は、1815年に起きたニューオーリンズ戦争で攻めこんできたイギリス軍を見事な戦略で撃破した英雄で、ア
メリカに一度でも行ったことのある人は、必ずどこかで見たことのある人です。実は20ドル紙幣の肖像画が、アンドリュー・ジャクソン元大統領その人なので
す。紙幣の肖像画に使われるくらいですので、日本で考えると聖徳太子や夏目漱石くらいにメジャーな人物ということです。
広場の外周には、似顔絵や風景画を描きそれを生業にしている絵描さん達がいたり、ジャズの街頭演奏がされたり、大道芸人がパフォーマンスを披露したりととても賑やかです。
また、道沿いには小さなお店がたくさん並んでおり、どちらかと言うとその土地独特の土産物を売っています。
今回は時間がないのであまりゆっくりとできませんでしたが、休日であれば半日くらいは時間をかけてゆっくりと探索したい地区です。ルイジアナ州立博物館や
広場の全景が見渡せるワシントン大砲公園、1850年に完成したアメリカ最古のアパート『ポンタルバ・アパートメンツ』などがあります。私たちがニューオーリンズで、米国アクションプロダクツの開発スタッフと長時間にわたって議論していた内容の一部をご紹介しますと、車椅子用の床ずれ予 防具についてですが、現在、欧米各国では床ずれと座位保持(正しく座った姿勢を継続すること)とは切り離せない問題であると考える研究者が多くいます。例 えば如何に優れた床ずれ予防具を使用しても、腰が前にずれた姿勢ではお尻の脂肪の少ない局所に体重が集中し、床ずれのできる危険性が高くなります。
米国アクションプロダクツは、このような問題を解決するために『車椅子用のパッドは、今までは平状のタイプを主力にしてきたが、これからはお客様 の姿勢に合わせて座位保持クッションをオプション商品として提供していく』との基本姿勢を打ち出しました。どのような体型の人でも、どのような状態であっ ても、正しい姿勢で座れるように数十種類の様々な形状やサイズのクッションで座位保持の補助をするというものですが、この考えには私たちを含めた世界50 カ国に展開するアクションプロダクツグループのすべてが同意しました。また、先行して座位保持クッションのオプション販売を始めた米国では、絶大な支持を 受けて急成長しているとのことでした。
ところが問題は、国によって営業員や販売員、看護師、療法士など関係者の床ずれや座位保持に対する知識のレベルなどが違うということです。日本で
は座位保持という考え方自体がまだ新しい分野で、"正しい座り方"についての専門的な知識はそれほど浸透していません。"正しい姿勢で座れるように数十種
類のクッションで補助する"ためには、お客様一人一人についてどのクッションを組み合わせるかを専門知識をもった人が選定しなければなりませんが、そのよ
うな人が各都市に何十人、何百人いる米国と違い日本は圧倒的に不足しています。
数日程度の研修を受けるだけでは専門的な知識を身に付けることはできず、しかも最低でも数千人という関係者が専門知識を身に付けなければ正しく機能することができません。
この問題の結論として、私たちは『100%の方に満足して頂くために数十種類のクッションを用意するが、専門知識をもったアドバイザーによる選定 が必要である』というアメリカ式を最終目標とするものの、まずは『80%の人に満足して頂くために数種類のクッションを用意し、基礎知識さえもったアドバ イザーであれば選定できる』ということに取り組んでいくことを決めました。そのために日本人の標準体型に合った座位保持クッションの開発を早急に行なうと 同時に、現在無料発行している『正しい床ずれの予防と介護』に加えて座位保持に関するマニュアル書を配布し、販売員や看護師、療法士など関係する方々に基 礎知識を吸収して頂けるように全力で頑張って参ります。
最後になりますが、床ずれや座位保持についての情報や知識、経験談をおもちの方がいらっしゃいましたら、マニュアル書改正にあたり参考にさせて頂きますので、どのようなことでもお教え下さいますようお願い申し上げます。
また、メドトレードは毎年開催都市を移動しており、近年ではニューオーリンズの他にアトランタ、オーランドにて開催されていますが、アトランタとオーラ
ンドの情報と、ヨーロッパ最大の福祉機器展が開催されているドイツのニュールンベルグ、デュッセルドルフの道中記とまだまだ続く予定ですが、もしもこれら
の都市の展示会見学をお考えの方でお知りになりたいことがございましたら、お気軽にメール等でお問い合わせ下さい。
皆様のご健康とご多幸をお祈りして、あとがきとさせて頂きます。