床ずれの最大の原因である圧力に対して、最も効果的な予防方法は体位交換ですが、実際には昼夜を問わず2時間に1回の体位交換を行うことは、介護者の体力的、金銭的、時間的なことなどを考えるとなかなか困難です。そこで、床ずれ予防具の出番です。それぞれが圧力分散を考えて開発されていますので、使わない状態に比べて体位交換の回数を減らすことができます。
床ずれ予防具には様々なタイプがありますが、その選び方を間違うことで患者の身体能力を低下させてしまうようなケースも増えています。例えば、体動能力の残っている人にエアマットや厚みのある低反撥ウレタンフォームなどを使用すると、体が沈みこむために動きにくくなったり、起き上がりにくくなったりしてしまいます。すると、体を動かそうとする意欲が萎え、筋肉が萎縮することなどで、半寝たきりの人が完全寝たきりになってしまうこともあるのです。
もう一つの床ずれ予防具の選び方を間違うことで怖いのは、床ずれができたり悪化することです。必要以上に高機能やクッション性の高い床ずれ予防具を使用することは、前述の通り身体能力の低下に繋がりますが、逆に床ずれのできる危険性の高い患者に低機能の床ずれ予防具を使うことも危険です。つまり、はじめにどのレベルのどのタイプの床ずれ予防具を使うかということも大切ですが、患者のその時々の状態に応じて床ずれ予防具を使い分ける必要があります。
床ずれ予防具を使えば、体位交換をしなくてもよいと考えている人や、宣伝している商品もありますが、床ずれ予防具は圧力を分散するのであって、全くゼロにするわけではありませんので、体位交換は必要です。床ずれ予防具は、あくまで床ずれ予防のお手伝いをするものであって、頼りきってはいけません。また、その床ずれ予防具も現在のところは確かな基準がなく、その性能も様々ですので、使用する人も十分に検討し確かな目で判断しなくてはなりません。
床ずれ予防具としての最低の条件は圧力分散ですが、この圧力分散というものは、なかなか体感することはできません。健康な人にとって寝心地のよいベッドでも寝たきりの人の場合は床ずれができてしまうことがあります。そこで、効率のよい床ずれ予防具かどうかの目安として、次の5点を確かめてみるとよいでしょう。
1.必要以上に沈み込まないかどうか
ある程度沈むことは、圧力分散と接触面積を多くする点から必要ですが、厚みがあり過ぎて必要以上に沈み込むと「ハンモック現象」が起きて、体の両サイドや肩や腰などの突出した部位に圧力が集中してしまいます。ふわふわのソファーの方が長時間になるとしっかりしたソファーよりも疲れやすいのはこのためです。
2.底づきしないかどうか
床ずれ予防具に寝た時に、体の一部がベッドマットレスや布団などについてしまうことを「底づき」といいます。底づきしてしまうと、それ以上圧力分散ができません。つまり、底づきをしにくい方が、圧力分散能力が高いといえます。
3.押し返してこないかどうか
空気や水を使った床ずれ予防具で特に注意しなければならないのは、量が多すぎると空気や水は押し返す力が強いということです。押し返す圧力が高いと、逆に床ずれの危険性が大きくなります。エアーマットの場合は、この押し返してくる力を制御するために、体重によって空気圧調整ができるタイプがよいでしょう。
4.表面はザラザラしていないかどうか
寝たきりの方の皮膚は弱っていることが多く、少しの擦れで傷つき、床ずれの原因となってしまいます。そのため、マットの表面で指を縦横に滑らせてみて、いずれか一方でもザラザラするような床ずれ予防具は避けた方がよいです。
5.保守サービスのしっかりした企業かどうか
近年、介護ビジネスに参入する企業も多いですが、2~3年で撤退してしまい購入した後に故障が起きても対応してもらえないケースも増えています。保守サービスをしっかりしている企業かどうかは、
(1) メーカーの連絡先が明記されているかどうか
(2) 保証期間や耐用年数について明記されているかどうか
(3) 製品の性能や床ずれに関する質問に対して、しっかりと対応できる窓口があるかどうか
(4) 販売実績や公的機関の試験結果などの裏付け資料があるか
等を目安とするとよいでしょう。
床ずれ予防具として、国内では最も普及しているエアーマットですが、十分に研究して開発されたものからビーチマットにポンプがついた程度のものまでさまざまです。エアーマットを選ぶときは、少なくとも次の5点をチェックする必要があります。
1.セル型かどうか
細長い独立型のエアセルが並んだエアーマットは、一体型のエアーマットに比べて床ずれ発生率が2分の1程度になります。エアセルは20本以上が好ましいです。
2.エアセルに十分な高さがあるかどうか
エアセルの高さが低いと、簡単に底づきしてしまいます。
3.素材は耐久性に優れているかどうか
塩化ビニルを使ったものは、耐久性に乏しく破損しやすいので、ウレタンフィルムかポリマーフィルムを使ったものがよいでしょう。
4.エアーポンプは静かかどうか
エアーポンプのモーター音は、本人ばかりか同室の患者にも耳障りなもので気を遣います。エアーポンプは、静かで耐久性のあるものがよいでしょう。
5.エアー噴出型かどうか
全身の湿潤状態を防ぐためにエアーを噴出するエアーマットもありますが、創部の乾燥につながることと、エアー噴出のためにマットの内圧を高くしなければならず、低圧保持ができない、MRSAなどの菌を飛散させたり床ずれ部位を乾燥させてしまい治癒を遅らせる可能性がある、などの理由から床ずれができている人には好ましくない場合があります。
ただし、低圧保持ができるタイプを床ずれの発生していない患者が予防用に使用することであれば、特に問題はありません。